じゃんぽ~る西×映画監督フィリップ・ドゥ・ショーヴロン特別対談!

(※この記事は2016年2月に公開されたものです。)
株式会社シュークリーム(マンガ編集プロダクション) 2023.09.05
誰でも

自らもフランス人女性と結婚したじゃんぽ~る西先生が、異人種間の結婚をテーマにした映画の監督に直撃取材!特別対談が実現!

異人種、異教徒との結婚というテーマをユーモラスに描き、フランスで大ヒットを記録した映画『最高の花婿』の監督、フィリップ・ドゥ・ショーヴロン氏がこのたび来日。そこで、『モンプチ 嫁はフランス人』が好評発売中で、自身もフランス人女性と結婚しているじゃんぽ~る西先生との特別対談を敢行し、作品の魅力についてたっぷりと語って頂きました!

『最高の花婿』(2016年3月日本公開)

本国フランスで1,300万人の観客を動員して2014年の年間興収成績1位のヒットとなったコメディ映画。

あらすじ

ヴェルヌイユ夫妻には、悩みがあった。3人の娘たちが次々とアラブ人、ユダヤ人、中国人と結婚……異文化への驚きと気遣いに疲れ果てていた矢先、末娘が婚約!喜ぶ夫妻の前に現れたのは、コートジボワール出身の黒人青年だった。しかも、フランス人嫌いの彼の父親が大反対。果たして、色とりどりの家族に愛と平和は訪れるのか──?

© 2013 LES FILMS DU 24 – TF1 DROITS AUDIOVISUELS – TF1 FILMS PRODUCTION

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あらすじ

愛が大事なフランス人ד愛が苦手”な日本男子の イクメン奮闘記!

「授乳」も「オムツ替え」も得意な夫唯一慣れなかったのは…?語学誌で連載する「フランス語っぽい日々」のほか、特別描きおろしも収録!!

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じゃんぽ〜る西(以下、西):映画『最高の花婿』を拝見しました。最初の10分くらい見た時点で、もう安心したんですよ。この映画をつくっている人への信頼、というか。だから、あとはこの船にただ乗せていってもらおうというような気持ちで、最後まで見させて頂きました。

フィリップ・ドゥ・ショーヴロン(以下、フィリップ):ありがとうございます。

西:普通の日本人にとってフランスのイメージというのは、すごくエレガントな…例えばシャンゼリゼとか、ディオール、シャネルとか(笑)。あと、人種差別が結構あるとか、最近はテロがあったり。割と両極端なイメージなんですよね。ポジティブな事とネガティブな事が。

フィリップ:ええ、わかります。二重人格な国ですよ、フランスは(笑)

西:日本もそういうところはありますけどね。それで、時に日本人はフランス人のユーモアをネガティブに捉えてしまう場合もある。そういう時に僕はすごく辛くて、ちゃんと説明をしたいんですよ。でも、うまくできなくて…。で、この映画を見てみて、これを一人でも多くの日本人に見てほしいと思いました。この映画に描かれているような状況って、日本人にとっては想像しづらい。宗教的な事もそうだし、人種の事も。なので、そういう事を理解する入口になるかなと思って。しかも、非常に楽観的な描き方なので、とても良いなと思いました。

フィリップ:この映画では、様々なコミュニティの良い面をちゃんとポジティブに描きたかったんですよ。

西:人種の違う者同士でお互い、かなり辛辣なジョーク…人種を揶揄するような事を言って、相手を攻撃しているんだけど、“良性”なものなんですよね。なかなか、そのニュアンスって日本人には伝わりづらいと思いますけど。

フィリップ:やはり、善意が根底にあればこそ許されるものだと思います。本当の意味での、深刻な差別にはなっていない。実際に撮影現場でも、違う人種の俳優同士が、わりとギリギリのジョークを言い合って笑いあっていましたから。フランスには、確かに差別主義者はいます。だから、嫌な思いをする事もある。そういうフラストレーションを、ジョークを言い合う事で少しずつ発散しているようなところはあると思いますね。

西:なるほど。あと、お聞きしたかった事があって。中仏ハーフであるはずのシャオ・リンの双子の娘が、日本人の僕の目から見ると、“純”中国人に見えたんですが…。

フィリップ:よくお気づきで(笑)。そうなんです。ハーフの双子の子供を見つける事ができなかったので、中国人の子たちを起用しました。それを指摘されたのは初めてですよ(笑)。さすがの観察眼ですね。

西:いえ、もしかしたらあえてそうしたのかな、と思ったもので…(笑)。そういえば、クロード(フランス人の父)がキッパ(ユダヤ人がかぶる帽子)をかぶったり、ブブ(コートジボワールの民族衣装)を着たりしている姿は、パッと見ただけで笑わせるようなおかしみがあって面白かったです。

フィリップ:そうそう、笑えますよね。僕は、真面目すぎるものは苦手なんです(笑)。もし僕が、このテーマでシリアスにつくったとしたら、消化不良を起こしていたと思う。また、見る人にもそういう印象を与えるものになってしまう気がします。なんにせよ、僕にはこういうやり方しかできないんです。

西:でも、そのユーモアこそがこの映画の魅力だと思いました。監督ご自身としては、この映画がこんなにフランスでヒットしたのはどうしてだと思いますか?

フィリップ:それが分からないんですが…(笑)。やはり、皆にとって共通のテーマだったからじゃないでしょうか。映画をつくる前に、このアイデアを色んな人に話してみたら、大抵の人が「それはすごく面白そう!」という好意的な反応を返してくれました。フランス社会に存在する代表的な移民のコミュニティと、白人でなおかつカトリックの家庭。そのどこかしらに、皆、自分を投影できるところを見つけてくれたのだと思います。

西:そうですね。日本人が見る場合には、この映画には、日本人があまり知らないフランスの事が描かれているので、色々気にしながら見ると面白いと思いました。例えば、結婚式。市役所で挙げているじゃないですか。あれは、日本では無いですからね。

フィリップ:日本は、宗教的なものだけですか?

西:いえ、もちろん神社で行う式も一般的ですが、最も多いのは“キリスト教風”ですね。

フィリップ:一体それはどういう(笑)?

西:教会風の建物の中で、白いウェディングドレスを着る…というのを、日本人の女性は好むんですよ。なんなら神社で着物を着て日本風にやった後で、ドレスも着たりしますからね。それで思い出したんですが、映画の中で、三人の義理の息子たち(二人は異教徒)がカトリックの教会に行って、讃美歌を歌うシーンがあるじゃないですか。あれを見て、ちょっとホッとしたんです。フランス人も、日本人みたいにちぐはぐな事することもあるんだなって(笑)。

フィリップ:しかも、三人はいかにも「自分は讃美歌も完璧に知っているぞ!」と、我先に主張するかのように歌っていますから。あそこは笑えますよね(笑)。

西:あと歌のシーンと言えば、フランス人の父の前で、義理の息子たちがラ・マルセイエーズ(フランスの国歌)を熱唱するシーンも、非常に印象的でした。

フィリップ:あのシーンは、私がこの映画を通して伝えたかった事を、象徴的に表している場面です。彼らのような移民の2世は、フランスで生まれ育ち、フランス人としての自覚を持って生活しています。にも関わらず、白人社会の中で、どこか完全にはフランス人扱いされていないような、疎外感を感じながら生きている部分もある。だからこそ、あの息子たちはラ・マルセイエーズを歌い、「この歌は白人のフランス人だけのものではなく、自分たちのものでもある」という事を示しているわけです。

西:なるほど。あのシーンはとても好きです。この映画は、続編の製作も決まっていると聞きましたが…。

フィリップ:まだ少しも書けていないんですけどね(笑)。アイデアはまだはっきりとは決まっていないのですが、この映画の最後でフランス人の両親が、「世界旅行をする」と宣言していますから、それを撮っても良いかもしれないですね。義理の息子たちの母国を旅して、でもそこでまた騒動が起こる…みたいな。

西:それは面白そうですね。今から楽しみです。

(取材:2016年2月某日)

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『おとうさん、いっしょに遊ぼ 〜わんぱく日仏ファミリー!〜』

フランス人の妻と2人の息子と暮らす、漫画家・じゃんぽ~る西。ある日、1歳の次男に絵本の読み聞かせをしていて気づいたこと、それは「ストーリーを全然気にしてない…!?」

「物語作り」に悩まされてきたプロの漫画家としては衝撃的な発見。父として、そして漫画家として、「絵本」が子供を惹きつけるその謎を探るべく、「絵本考察」の旅に出る──!?

家族の日常を唯一無二の視点で切り込む、新感覚コミックエッセイ!

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