━━槙生と自分が似ていると思うところはありますか?…「部屋が片付けられないところ。」
━━ヤマシタトモコに『違国日記』のことを聞いてみよう②
2019年5月12日(日) Asagaya/Loft A(東京・杉並区)にて行われたヤマシタトモコ先生トークイベント完全版レポート、第2弾をお届け! 槙生のモデルやキャラクターの名前、さらに『違国日記』のテーマのひとつまで、今回も密な話題盛りだくさんでお送りいたします!
Q:「『違国日記』は現実世界でのモデルがいらっしゃるのですか? カッコイイ姿や性格等、槙生ちゃんとヤマシタ先生が似ている気がしているので、もしかして先生自身がモデル…?とも思ってました」
ヤマシタ 愚問…!(笑) 違います。モデルにしたわけではないですが知人に少女小説家がいまして、十代の女の子に向けて物語を書いている彼女が十代の女の子のことを真剣に考えていることにとても胸を打たれたので、それは槙生を少女小説家にした動機のひとつになったかと思います。その知人と槙生は似てはいませんけどね。
――槙生や朝のキャラクターは、徐々に固まっていったんですか?
ヤマシタ 1話のネームを描き始めて、顔を決めなくちゃいけなくなったあたりから固まっていった気がします。槙生の顔に関しては、『エージェント・オブ・シールド』に登場するエージェント・メイの顔が好きで、三白眼の女が描きたかったところからぼんやり決まっていきましたが、槙生に限らずキャラのデザインや言動は、ネームをやり始めてから固まっていく感じです。
――槙生と自分が似ていると思うところはありますか?
ヤマシタ 部屋が片付けられないところ。私の部屋はもっと汚いですが(笑)。部屋を片付けられない人の話を描こうと思ったところもあるので。
Q:「『違国日記』では高代槙生さんが一番好きなのですが、彼女がパジャマにワンピースを着ることやズボラなご飯の作り方、人との関わり方など、描いていて先生が共感するポイントがありますか? というよりも、やはり先生ご自身の生活から作られているのでしょうか?」
ヤマシタ 描いた本人が共感ってなんか変じゃないですか?(笑) 槙生と朝が食べていたトーストとキャベツとソーセージのやつは、よく私も作りますよ。
――キャラのモデルの話とも繋がりますが、槙生と描き手を重ねて見てしまう人が多いようです。
ヤマシタ 先日、『FEEL YOUNG6月号』に掲載された回(単行本5巻収録予定の第21話)の話をツイートしようかどうか迷って、ネタバレになるかと思ってやめたんです。ここの場面なんですけど。
(槙生、えみりの母、朝、えみりがファミレスにいる場面が映される)
ヤマシタ なんでもない1コマなんですが、朝とえみりのやりとりに発達障害という言葉が出てきて、このことをいつどうやって描こうかというのは、1話の段階から思案していたことでした。これまではわりと当事者にしかわからないような描き方だったのをここではっきりと描いて。
――それを描くというのは、はじめから決めていたことだったんですね。
ヤマシタ メインのテーマのひとつが発達障害で、それを多様性と言ってしまうとあまりにもざっくりとしすぎてしまうんですが、メインの登場人物を発達障害の人にしようとは決めていました。以前にTVで発達障害のことをやっていたときに、あまりに自分が当てはまったのですごくびっくりしたんです。
今更びっくりしているということは、これからびっくりすることになる人たちも世の中に結構いるのでは!?と思ったので、描こうと。描きたいと思ったことと『違国日記』のテーマとがわりと合っていたからというのもあります。
Q:「作中で槙生が書いているお話はヤマシタ先生が書いたものですか? もしそうだとしたら、漫画のネタを考える時と小説のネタを考える時、何か思考回路で違いがあるか知りたいです」
ヤマシタ 槙生の小説の文章も私が書いてはいますが、たいした量ではないので、コマの背景やキャラの服を描くようなもの。小道具みたいなものですね。
会場 (感心のようなどよめき)
ヤマシタ 何?(笑)
――小説を書いたことはあるんですよね。
ヤマシタ 趣味で。
――小説家になることも考えました?
ヤマシタ …お金がもらえるならなんでもよかった(笑)。でも、漫画を描くほうがたぶん好きだったので、小説家になろうとは思っていなかったかな。
――漫画のほうが描きたいことを表現しやすかったとか?
ヤマシタ いや、そんな難しいことは考えてもいなかったと思います。そのとき…って今もそうですが、漫画を描くのが楽しかったからじゃないかと。
――槙生の小説部分を描くのも楽しんでいます?
ヤマシタ すごく楽しいです。前後の文脈も気にせず、必要な部分だけ書けばいいので、すごく気楽に楽しんで書いています。
――「高代槙生」名義で小説を書かないかと打診がきたら?
ヤマシタ 書くわけない(笑)。
――お金もらえますよ?(笑)
ヤマシタ 言い方!(笑) あくまでも1ページくらいだから楽しいのであって、仕事として何百枚も書くとなったら、しんどいし、連載は休みますよ。
(「それはダメ」と担当編集者から声が)
ヤマシタ ダメでしょ? だから無理です。
――残念(笑)。槙生の小説ネタはいくつか考えてあるのですか?
ヤマシタ いえ、ネームを描くときにその場で思いついたものです。小説ネタに限らず、描かないことは面倒くさいので考えないようにしているんです。描かなきゃいけなくなったときに考えます。
――寝る前に、本筋の横道だとか裏話的なことを妄想したりは…。
ヤマシタ 寝る前は、今やっているゲームの攻略のことを考えています(笑)。私は何も考えないほうだと思いますね。緻密な話作りはしていないです。
――こうやってインタビューされると、実は内心すごく困っていたりします?
ヤマシタ うん(笑)。
Q:「『違国日記』に限らず、ヤマシタ先生の作品の人物はみんな名前が素敵だなあと思うのですが、どのように名前を決めているのでしょうか? 各キャラの名前にイメージや背景などはありますか? 『朝』って名前が本当に好きです」
ヤマシタ 全然こだわりないです。実里と槙生は関連のある感じの名前にしようと思ってつけましたが、朝に関しては名前の由来を話すシーンを描くってなったから、そこで考えただけなんで。いい具合に辻褄があいました(笑)。
――なんとなくのフィーリングでつけることのほうが多いですか?
ヤマシタ そうですね。そのキャラの親がつけそうな名前をイメージしたりしてつけます。
(画面にネタ帳に描かれた塔野のカットが映る)
ヤマシタ 塔野はイケメンを出せと担当さんに言われたので出したんですが、その前からイケメンを出せとは言われていて、「イケメンではないけどメンは出ます」と笠町を出したら、もうちょっとイケメンが欲しいなとリクエストされて(笑)。最初は塔野とはまったく違うイケメンを出そうと思っていたんですが、どう考えてもそいつが機能しそうになかったんでやめました。美容師を出そうと思っていたんですよ。(画面に登場の機会を得られなかった美容師のカットが映る)
――「美形で特徴のない美容師」というコメントが容赦ないですね(笑)。
ヤマシタ 「あいつ顔だけは綺麗だよね」と言われるような男を描こうと思ったんですが、物語に上手くハマらなかったんで、結果、塔野になりました。
(インタビュー・文/桜雲社・山本文子)
第3弾は槙生の親友・醍醐や、槙生やヤマシタ先生ご本人の学生時代まで言及――!? 是非お楽しみに!
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