町麻衣 連載10周年インタビュー Part 3
今回はそれを記念して、改めて町麻衣先生にデビューや連載までの道のりや作品について伺いました!
——『アヤメくん』は研究活動や研究内容もかなり細かく描かれていますよね。
町 その辺はもう取材させていただいた方々のおかげです。皆さん本当にいろいろ優しく教えてくださるので。
——取材はかなり多いんですか?
町 そうですね。描く前にはまず取材させてもらってます。コロナ禍の前だと1年に2回、多いと3回くらいがっつり取材をして、数話分の情報をいただいていました。
——学会とかも実際に行っているんですか?
町 何回か行かせてもらいました。
——作中でも一般の人もお金を払えば入れると描かれてますが、実際行って話の内容はわかるものなんですか?
町 結構わかりますよ。もちろん、専門家ではないので本当にその研究のことを「理解」できるかというとそうではないと思いますが、研究者の方がご自身の研究を論理立てて説明してくださっているので、わかりやすくいろんなことを教えてもらえて楽しい空間です。
——やっぱりもともと好きなことだっていうのも大きいんでしょうね。
町 理系のお話を聞くのは好きです。
——それを作中にもかなり細かく描いてますよね。マンガとしては研究の詳細内容とかって端折ってしまってもいいところじゃないですか。それこそフィール・ヤングって雑誌なら特に。
町 そうですか?私としては取材で面白い話を聞いたからそれを紹介してるという感覚なんですよね。「みんな、これ知ってた?面白いよね!」って感じで。そういうのを見つけるとストーリーに入れたくなっちゃうんです。
——町先生の面白ポイントがそういう部分なんですね。面白いと思ったところを反映した結果、研究なんかの話が細かく入ってきてる。
町 そうですね。
パスポート紙袋置き忘れ事件in香港
——『アヤメくん』は海外の話も多いですよね。
町 はい。ロンドンやニューヨークは取材に行きました。それぞれ1週間くらい。『アヤメくん』の取材でロンドンに行ったのが初めての海外でした。
——え、そうなんですか。初めての海外で、しかも取材となると緊張したんじゃ。
町 でも、海外旅行好きの担当編集さんが一緒だったので楽しくできました。でも、初めてだから紙袋にパスポートを入れて、それを香港のトイレに置き忘れたりとかやらかしはありました(笑)。でも、ちゃんとトイレにあったのでギリギリ……大事件は起きてないです!
——結構な事件だと思いますけど(笑)。
町 それ以来ちゃんとしまうケースを鞄にチェーンで繋いでます(笑)。
——でも、確かに旅慣れてる人が一緒なら安心ですよね。
担当 わたしは旅慣れていますが、英会話は町さんに頼っています(笑)。
町 担当さんはどちらかというと英語は書く方が得意で、聞き取りが苦手なんですよね。
——え、じゃあ現地ではどうしてたんですか?
町 聞き取りはだいたい私がやってました。ロンドンに行ったときも到着が遅れてホテルから電話がかかってきたんですけど、担当さんからそのまま電話渡されて私が対応してました(笑)。「朝食の会場聞いてきて」とか、そういうのは私が。
——担当編集と作家さんなのに、まるで逆の関係ですね(笑)。でも、町さんは英語できるんですね。
町 いや、全然です。英語を勉強していたわけでもないし。ただ、海外ドラマとか洋楽が好きなので、聞くのは何となくわかる程度です。でも、担当さんは読み書きはできるので、準備はすごくやってくれるんですよ。行く前に調べ倒して、旅のしおりまでつくってくれたり。
——それは安心ですね。
町 ただ、私はあんまりそういうの読まないんですよね。だから、ちゃんとしおりに「現金が必要だから持ってくるように」とか書いてあるのに、読んでなく持ってきてなかったり(笑)。
——作中でも椿が現地でアテンドの人に支払うお金を持ってきていなくて困ったりしていましたね。
町 そういうのは作品にも取り入れてますね。
——実際、作中でもアヤメくんや椿先輩は海外でいろんなところに行ってますよね。博物館や研究関係の施設だけじゃなくて、観光スポットやレストランの様子も結構描かれてる。
町 取材で行ったところはだいたい描いてますね。
担当 ネームがあがってくると「ここもあそこも描いてある!」と驚くんですよ。
——取材に行かせ甲斐がありますね(笑)
町 取材はどこでも楽しいです。ハプニングがあっても面白いと思うし。
私も取り出せないけど泥棒も取り出せない
——印象に残ってるハプニングはありますか?
町 取材ではないのですが、担当さんと行ったトルコはいろいろありましたね。海路だとイスタンブールから30分もかからないところに行ったんですけど、帰りになったら海が荒れてて船が欠航になっちゃったんです。仕方ないから陸路で帰ることにしたら、どう調べてもバスを乗り継いで5時間かかることがわかって。
——5時間!
町 海を突っ切る分には近いけど、陸路だとかなり遠いという。それで、いちいち「イスタンブール(に行きたいけど合ってる)? 「イスタンブール?」って聞きながらバスを乗り継いで、最後はぼったくりのタクシーに乗って深夜に帰ってきました(笑)。
——ちゃんとたどり着けてよかった……。
町 ハプニング続きでしたね。帰りの空港行きのタクシーもいろいろあって現金も足りなくなって途中で下ろそうとしたんですけど、カードがATMに飲み込まれて戻ってこなくなったり(笑)。
——それ、日本で起こってもめちゃくちゃ困るやつじゃないですか!
町 でも、私も取り出せないけど、泥棒も取り出せないですから。
——発想。
町 すぐにカード会社に電話してカードを止めてもらったので大丈夫です。
——でも、『アヤメくん』を描いてる人ってやっぱりそういう感じなんだなって妙に納得します。アヤメくんたちって悩んだりはするけど、あんまりパニックになったり、メンタルをやられたりしないですよね。
町 そうですか(笑)。
担当 町さんは仕事でも旅行でも「今できる一番効率的でベストな行動はこれ!」と決めるのが早くて、潔いんですよね。
笑って読んで、古生物にも興味を持ってもらえれば
——『アヤメくん』で今後描きたいシーンとか場所ってありますか?
町 カナダは描きたいですね。あとは海外でのドタバタも隙あらば入れていきたい(笑)。
——いろんなハプニングがありそうですもんね(笑)。
町 ギャグが好きなので、笑って読んでもらえたらいいなと思ってます。その上で、恐竜とか古生物にも興味を持ってもらえたら嬉しいです。取材させていただいている研究者さんとかいろんな方が本を書いたり、テレビに出たりもしているので、そういうものにも触れるきっかけになってくれたら。
——フィール・ヤングで「古生物に興味を持つきっかけになってくれたら」というコメントが出てくる作品は、この先も『アヤメくん』だけでしょうね(笑)。
町 こんなに長く描かせてもらってありがたいです。
——でも、町先生が本当に面白いと思っているからこれだけ続いているし、読者も興味を持てるんだと思います。ありがとうございました!
(インタビュー・文/小林聖)
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