『やがて明日に至る蝉』発売記念!ひの宙子インタビュー!①この物語が誰かの味方であってほしい(全3回)

2023/04/25『やがて明日に至る蝉』発売!本日より著者・ひの宙子さんのインタビューを3回に分けてお送りいたします。初回は子供同士の性犯罪を描いた表題作について。暴力は描かずに希望を描こうとした、その決意に迫ります。
株式会社シュークリーム(マンガ編集プロダクション) 2023.04.25
誰でも

すっかり漫画家になりました

┈┈4年ぶりの短編集『やがて明日に至る蝉』発売おめでとうございます!今のお気持ちをひとことお願いします!

ひの:ありがとうございます!単純に嬉しいです!

あとがきにも書いてますが、前作のあとあんまり漫画に気持ちが向かない時期があったりしまして、その時間を経て半ばリハビリのように描きたい時に描きたいものを描きたいように描かせてもらえた作品の集大成になりました。

最初に漫画家になりませんかと言ってくれたのも、これからも漫画家をやっていこうと背中を押してくれたのもフィール・ヤングだと思っています。懐の深さがすごすぎる。ほんとに感謝しきりです。おかげさまですっかり漫画家になりました。

この物語がただそこにある、この世に存在しているということ自体に意味がある

┈┈振り幅が大きい作品群ですが、ぜひ順番にお話をお伺いさせてください。まずは『やがて明日に至る蝉』。子供同士の性犯罪で、被害者の女の子を主人公にしたお話です。非常にショッキングなテーマですが、暴力シーンは描かれず、読後には希望が残ります。ひのさんが本作を描く上で大切にされたことを教えてください。

ひの宙子🍺4月下旬に単行本×2
@hn_hrk
性犯罪の被害者と加害者の弟、わたしたちの"呪い"を解く春の話。

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#やがて明日に至る蝉 (1/10)
2023/04/14 12:00
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ひの:この話を描くと決めてネームをやっていたころ『リスペクト』という歌手アレサ・フランクリンの伝記映画の、監督へのインタビュー記事を読みました。結構話題になっていたと思うので、記憶にある人もいるかもしれません。

この映画では性暴力に触れながらその時そのものの"再現"シーンはなく、記事のなかで以下のように理由が挙げられていました。「」内は記事からの引用です。

まず、物語を扱う者の責任として「トラウマをエンタメとして搾取してはいけない」から。

次に「カラダが受けた暴力ではなく、その"暴力から彼女がどんなふうに立ち直ったか"という点にフォーカスしたかった」から。

最後に、物語に触れた人に「トラウマを与えたくない」から。「性暴力や暴力を描写するとき、表現者は、サバイバーたちを思いやることの責任をもっともつべき」と締められていました。

ふたりの物語を描く上で暴力の再現はもともと不要ではありましたが、この記事をよんで正しく覚悟として持っておくべき話だと心に留めました。不思議なことに必要な時に必要なメッセージは届くものだなあと思ったり。『やがて明日に至る蝉』も帯にあるように「呪いを解く」希望の話、これからのふたりの話として描きました。

繰り返しますが直接的な暴力のシーンはありません。ただ過去の回想の中で、加害者であるナオくんの顔と、ゆうひが自分の家のドア前で放心している、はるとが見てずっと心に引っかかっていたその姿だけは描いています。

あのシーンは、実際ははるとがゆうひに言葉で説明しているので一旦セリフだけにしてみたのですが、必要以上にキツいシーンになってしまい今の形に落ち着きました。もちろん、ゆうひはそのはるとの言葉の厳しさを一身に浴びていたわけですが、読む人に同じ気持ちを味わせなくても"厳しいシーンであること"を伝えることはできたので。

この物語が誰かの味方であってほしい気持ちは本当です。でもあくまでも物語として、こうしてふたりの抱えるものを伝えていくことで、もしかしたら届いて欲しい人・必要としてくれる人が読めない話になってしまうのかも…と思ってはいました。

それでもこの物語がただそこにある、この世に存在しているということ自体に意味があるんじゃい!!という強い気持ちで描き切りました。

今までとは何もかもが違った

┈┈前後編で計82ページ。これまでのひのさん作品の中では最大ボリュームだったと思いますが、今までと違うな…と感じたことはありましたか?

ひの:何もかもが違うな…という感じでした。

「あんまり漫画に気持ちが向かない時期」の一因に「どうしても描きたいものがあるため長編連載の形にならざるを得ないのだが長編の描き方、まったくわからぬ」がありまして、思いつく限り試行錯誤してたんですがそれすら嫌になって…。それで『ホタテガイの女』などの読切りネームを掲載の予定もないのに勝手にやりました。他にも出してない読切り、まだいくつかあります。

それでもなんだかんだと描き続けていたら、増え続ける描きたいものの中にだんだんと読切りの尺では描けないものの方が多くなってしまって。

それでもうしょうがなくなって、描きたいし、パンクするので頭の中から早く出したいし、いつ終わるとも知れぬ長編は無理でも今なら読切前後編はいける気がすると思って挑戦することに決めました。

今までの読切りと違うのは、確かにボリュームもそうなんですが、前後編と話を区切って制作したことが一番大きかったと思います。前編のラストをどこにするべきか、かなり神成さんと相談した記憶があります。

細かいエピソードの順番、情報の出し方と隠し方、ページ数と情報量のバランス、客観的にどこが話のヤマなのか、読者をどうやって期待させるか、今思うと基礎訓練というか漫画制作のチュートリアルのような感じさえあったなと…。

こうして一度「話を一気に終わらせない」をやってみると、ひとつの話を区切って描くことで使える演出のカードが増えるのがわかってそれがとても面白かったです。前編の最後から後編の冒頭で一旦シーンを思い切って飛ばしてしまい、前編の続きは回想で入れるという構成は前後編だからこそできた演出でした。

「いずれできるようにならねばならないこと」が「できる・できたこと」になったというのが一番大きな「今までと違うこと」です。描き終えた時に「これで苦手意識がひとつなくなった」と感じました。やったこともないのに苦手も何もないんですが…。

いま他誌で初長編連載をやってますが、この『やがて明日に至る蝉』を経ずにはとても描けなかったと思います。

▱▱▱▱▱▱ 全3回予定! 次回配信は4月26日(水)! ▱▱▱▱▱▱

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『やがて明日に至る蝉』

「君は絶対悪くない。」

性犯罪の被害者と、加害者の弟。この再会は、運命か。

中2の春、ゆうひのクラスに来た転校生は小2まで隣家に住んでいた遥斗だった。ゆうひは遥斗の兄から性被害に遭った過去がある。知られていないと思っていたが、遥斗は「お前はあいつを殺しても罪にならない」とゆうひに持ちかけてきて…?(『やがて明日に至る蝉』より)

痛みに寄り添う渾身作から、垂涎の海鮮グルメ喜劇まで。実力派・ひの宙子の世界を味わい尽くす傑作短編集!

[同時収録]折って切らない。/ホタテガイの女/タラバガニの男

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