『かしましめし』1巻発売記念!おかざき真里×よしながふみ、かしまし対談

FEEL YOUNGで好評連載中の『かしましめし』の第1巻刊行を記念して、著者のおかざき真里先生と、フィーヤン初登場のよしながふみ先生による夢の豪華対談が実現!
奇しくも同じ年にデビューを飾り、現在も「ご飯もの」と「時代もの」の作品を並行して連載中…という、共通点の多いお二人に、楽しくにぎやかにおしゃべりして頂きました。
株式会社シュークリーム(マンガ編集プロダクション) 2022.06.28
誰でも

●あらすじ

28歳、独身、職なし。わたしを救う、ごはんがある。

「私たちは何度も生き返る。小さく小さく、くりかえし生まれ変わる」

心が折れて仕事を辞めた千春。バリキャリだが男でつまづくナカムラ。恋人との関係がうまくいかないゲイの英治。同級生の自死をきっかけに再会をした、美大の同級生3人。つらくて心が死にそうになっても、みんなで集い、ごはんを食べれば生き返ることができる。それはとても温かで、幸福な時間ーー。

◆ Profile ◆

おかざき真里

1994年「バスルーム寓話」で『ぶ~け』(集英社)よりデビュー。華麗な絵柄と繊細な筆致で大人の男女の恋愛模様を描き人気を博す。広告代理店の博報堂に入社後、デザイナー、CMプランナーを務めつつ作品を発表し続ける。2001年に同社を退社し、執筆活動に専念。著書にドラマ化もされた『サプリ』や『&-アンド-』(ともに祥伝社)など多数。2017年現在、小誌にて『かしましめし』『月刊スピリッツ』(小学館)にて『阿・吽』を連載中。

よしながふみ

1994年「月とサンダル」で『花音』(芳文社)よりデビュー。『西洋骨董洋菓子店』(新書館)で第26回講談社漫画賞少女部門受賞。『メロディ』(白泉社)で連載中の『大奥』は第5回センス・オブ・ジェンダー賞特別賞、第10回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、第13回手塚治虫文化賞マンガ大賞、2009年度ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア賞、第56回小学館漫画賞少女向け部門などを受賞している。2017年現在『大奥』のほかに『モーニング』(講談社)にて『きのう何食べた?』を連載中。

先の展開はそれほど決めずにゆるっと

よしなが:『かしましめし』を連載で読ませていただいていて、何回か話が進むまで、登場人物のひとりである千春の名前が出てきませんでしたよね。てっきりこのまま名前を出さずにいくのかと思っていたんです。

おかざき:実は、あえて出さなかったわけじゃないんです。私はキャラクター表などを作らないこともあって、キャラの名前を考えずに描いていることが多くて。コミックスにするにあたって、初めてフルネームをどうするか悩むなんてことはしょっちゅうです。なので『サプリ』でも主要登場人物の下の名前を考えていなかったために、ドラマ化されたときにスタッフの方が考えたものをあとで漫画でも採用したり(笑)。キャラクターを設定するということがなくて、決めておくのは雰囲気なんですよね。漫画を描く際、よしなが先生はセリフを先に決めて描かれているんですか?

よしなが:セリフというか、漫画そのものが頭に浮かんで、それを紙に落としていく感じです。

おかざき:私はまずリズムを決めて考えるんです。たとえば、風景・アップ・アップ・風景・アップ・バンッと見開き・風景…みたいな感じで、セリフがまったく入っていないビジュアルだけが浮かびます。そのときのリズムがドラム主体だったり、チッチッというシンバルの音だったり、クラシックみたいに流れるように始まったりと、そういったリズムに合わせたコマ割りだけが最初に浮かぶんです。

よしなが:そんなふうに考えて、ネームがきっちりハマるというのがすごいですね…!

おかざき:そうじゃないと考えられないんです(笑)。なので、展開を計算ずくで考えるということができなくて。

よしなが:千春の名前もすべて計算の上で意識的に出していないのかと思っていました。では『かしましめし』も、先の展開をそれほど決めずにゆるっと描かれているのですか?

おかざき:ゆるっとですね(笑)。もともとこの話は、知り合いの知り合いが女子とゲイの男子と一緒にシェアハウスをしているというのを聞いて、男女3人のシェアハウスものって面白そうだなと思ったことがきっかけなんです。なので、最初は男女のシェアハウスものをやりたいと思っていて。いろいろとタイミングが合わずに、その設定は叶わなかったのですが。

よしなが:それでご飯ものに?

おかざき:そうですね。初めはそちらをメインにということにして。話を進めていく中、ちょうどコミックス1巻の終わりでいよいよ3人がシェアハウスすることになりました。

よしなが:なるほど、そうだったのですね。

英治の何気ない一言から3人のルームシェアが始まることに。(第6話)
英治の何気ない一言から3人のルームシェアが始まることに。(第6話)

最初はレシピが尽きたところでこの話は終わると思っていたんです(笑)

よしなが:作中に描かれているレシピ、エビと春雨のタイ風煮が登場したとき、思わずそのページをコピーしてしまいました。殻つきの海老は高級なので、何かの機会に作ろうと思って、まだ実際には作っていないのですが。

おかざき:わー!ありがとうございます。殻つきじゃなくても大丈夫ですよ。

よしなが:でも、きっと殻つきのほうが美味しいお出汁が出ると思うので(笑)。作中に登場するお料理は、普段先生のご自宅で作られているものが中心なんですか?

おかざき:はい。なので、基本的にものすごく簡単なものばかりです。よしなが先生の『きのう何食べた?』の連載が始まったときに、毎回メニューの品数が多いので、これはいずれ苦しくなるのでは!?と勝手に思っていたんです。そうしたら、まったくそんな気配がなくて、すごいなーと(笑)。

よしなが:確かに、最初はレシピが尽きたところでこの話は終わると思っていたんです(笑)。でも、食べ物にも流行があるので、これを作ってみたいというものが現れたり、塩麹や塩レモンのような調味料や、シリコンスチーマーといったキッチングッズが流行ったりと、意外とネタに困らなくて。漫画に登場させたけれど、今ではすっかり作っていないレシピもあるので、定番メニューだけを描いているわけではないですし。品数に関してはですね…あれくらい作らないと、個人的に足りないんです(笑)。一品でもいいのですが、そうするとそのぶんたくさん食べなくてはいけないし、それよりはちょこちょこいろいろ食べられたほうがいいなと思いまして。

おかざき:そうだったんですね。

よしなが:うちはたくさん食べる家系のようで、どの親戚の家に行っても量も品数も多いんです。おかずを一品とかにすると、ご飯を3杯くらい食べないと物足りなさそうなので、結果として不健康な食事になりそうなんですよ(笑)。やはりうちは品数が多くないとダメみたいです。

おかざき:『きのう何食べた?』は、作り置きも利用されてはいますが、わりと毎回ゼロから作っているじゃないですか。実際にあれくらい作っているということですか?

よしなが:そうですね。友人に「この家の小鉢は大鉢だ。食べきれない!」と文句を言われるくらい副菜をたっぷり作っています。

おかざき:そんなにたくさん食べる方には見えないので、びっくりです!

よしなが:そ、そうですか?品数を食べるぶん、ご飯のお替わりはしないとか、早い時間に夕食を食べるとか、それなりに工夫してはいますが。

おかざき:お仕事場とご自宅は一緒なんですか?

よしなが:はい。なので、仕事をいったん中断して料理をして、食事をしたらそのまま続きをしたりもします。

おかざき:それであの品数はやっぱりすごいと思ってしまいますね。

よしなが:これだけ作るべしなんて思っていませんし、本当に自分のお腹が足りるように作っているだけなので…私の腹の容量の問題なんです(笑)。

「誰か」のために作る料理

おかざき:それはきっと、ご自身が料理を作るのがお好きというのもあるんでしょうね。

よしなが:炊飯器を利用した新しいメニューなんて見かけると、いつやってみようかとワクワクしたりはしますね。担当編集者さんが男性なこともあって、隙あらば揚げ物のリクエストをされるんですよ(笑)。そういうところから増えたレパートリーもあります。それに、連載を始めてからそれなりに時間が経ったこともあって、ケのご飯が続いたら、お客様をお迎えするようなちょっとハレのご飯のメニューにしたり、といったリズムもできてきました。登場人物もいろいろなので、ジャンクっぽい一品ものを描いてみたり、甘いものをメインにしてみたりと、バリエーションをつけられるようになったのも大きいと思います。

おかざき:なるほど、シロさんじゃない人が作るものもありますものね。

よしなが:担当さんに「あれ、作りましょう」とシロさんの予算に合わないものを提案されることもあるのですが、それはシロさん以外の人が作ればいいので(笑)。連載を続けてきたことで、いいバランスで描けるようになったんじゃないでしょうか。千春も言っていましたが、やはり人が来るとなると、それなりのメニューを考えざるをえないところがありますし、自分ひとりだと思うとついジャンクなものを食べてしまったり。

おかざき:そうなんですよね。私は普段、ほとんど子供用のものしか作らないのですが、3人いる子供がそれぞれ違うアレルギー持ちなんです。

よしなが:それで、ホイル蒸しなども食材が混ざらないように、小分けにした形になっているんですね!

おかざき:はい。せーの!で作るけれど、食材は混ざらないように気をつけます。

よしなが:なんのアレルギーかお聞きしてもいいですか?

お好みでいろいろ包めるホイル焼き。(第3話)
お好みでいろいろ包めるホイル焼き。(第3話)

おかざき:ひとりは卵で、ひとりは魚介・魚卵がすべてダメで、もうひとりはすでに克服したのですが小麦のアレルギーでした。3人のアレルギーが重なったときが大変でしたね。小腹を空かせたときに「ちょっとパン食べてて」ができないですし、たとえば全員にパスタを作るときも、麺を湯がくところまでが共通で、あとはそれぞれが大丈夫な食材で作るとか。

よしなが:すごい工夫…!パズルみたいにバラバラなパーツを組み合わせて考えなくてはいけないんですね。きっと先生が作られていたメニューを参考にしたい方がいると思います!

おかざき:あ、そうかもしれませんね。

よしなが:画家の男性が甲殻類のアレルギーがあると言っていましたので、きっとあれは伏線なんだわ、と思って読んでいました(笑)。

おかざき:そうか!考えていませんでした(笑)。

ドラマを入れることも意識しています

おかざき:よしなが先生は『大奥』という時代もの、『きのう何食べた?』というご飯ものを描かれていて、私は時代ものの『阿・吽』、ご飯ものの『かしましめし』を描いていて、だからこそ感じるというか、描き方が全然違うなと思うんですね。よしなが先生の作品はすごく考えを詰めて描かれている印象があります。

よしなが:どうなんでしょう…。『きのう何食べた?』は、簡単に描けるんじゃないかと甘い考えを最初は持っていたのですが、結果的に試作に時間がかかったり、効率がもっともいい時短の作り方を追求するのに手間取ったりと、意外と手がかかってしまいました(笑)。

おかざき:料理パートのボリュームはどんなふうに決めるんですか?

よしなが:メニューやそのときにどんなドラマを入れるかによって変わりますね。立て続けに料理をする、料理パートがメインの回を2巻で1回だけ描いたことがあるのですが、そのときに多少は人間ドラマを入れたほうがいいなと思ったんです。なのでそれ以来は、ドラマを入れることも意識しています。今は、なんとなくこういうエピソードならこれくらい、料理パートにこれくらいとページ数の加減が掴めてきたように思います。『きのう何食べた?』は、普通の作品だったら話がもたないような些細なエピソードも入れることができるし、そういうものを描くのが楽しくて。『かしましめし』は、がっつりとしたドラマものくらいきちんと話が詰まっている気がします。そのうえ料理も入っていて、すばらしいですよね…!

おかざき:言っていただけているくらい、きちんと描けているといいのですが。

(取材・文=桜雲社/山本文子)

(※この記事は「FEEL YOUNG」2017年10月号掲載の対談記事を一部抜粋したものです。完全版は本誌にてご覧頂けます。)

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『かしましめし』⑤

君と僕、ごはんの好みがちがうなら「好き」のかたちもちがってていい。

人生につまずいた3人の、恋や仕事やごはんの話。簡単レシピもたっぷり収録!!デザインの仕事を再開し、賞を獲った千春。ナカムラ、英治と喜びを分かち合うもかつてパワハラを受けた元上司から連絡が入り…。榮太郎に告げられない恋心を秘める英治だが彼を知るたびに感情は大きくなるばかり。彼のことはもちろん好き、だけど四六時中いっしょに居たいわけじゃないナカムラの恋模様は…?

“おいしいたのしい”の輪はどんどん広がり、“3人だけ”の食卓から、“みんな”の食卓へーー。

日常に疲れたら、好きな人とごはん、食べませんか?

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