「ごはんを一緒に食べたらもう仲良し」ヤマシタトモコが語る「ごはんを一緒に食べる」ことの意味━━ヤマシタトモコに『違国日記』のことを聞いてみよう③

こちらは2019年「ヤマシタトモコに『違国日記』のことを聞いてみよう2019」トークイベント・完全版レポートになります。ぜひ、2021年度版と合わせてお楽しみください!
株式会社シュークリーム(マンガ編集プロダクション) 2021.12.24
誰でも
2019年5月12日(日) Asagaya/Loft A(東京・杉並区)にて行われたヤマシタトモコ先生トークイベント完全版レポート、第3弾です! 槙生の学生時代からの友人・醍醐(だいご)についてや登場人物たちのファッションについて、さらにはヤマシタ先生が描く「ごはん」のシーンに込められた意味などなど……!? 今回も『違国日記』にまつわる種々様々なQ&Aをお届けしていきます!

Q:「醍醐の包団(餃子エピソード)が大好きです。さまざまな食にまつわるシーンがありますが、エピソードごとに、メニューはどうやって決めていますか? 意図的なものはないのかもしれませんが、『違国日記』で飲食シーンを描くうえで何か大事にされてることがあればお聞きしたいです」

ヤマシタ わりと私が好きなごはんを出しています。餃子のたれはうちの母がある日突然発明したものです(笑)。ごはんといえば、以前にねむようこさんと対談したときに、「ヤマシタさんはキャラが『美味しい~』って言っているシーンを描かないよね」と言われて、自分でもそのとき初めて気づいたんですが、なんだか恥ずかしくて描けないという話をしたことがあるんですよ。

――どんなところが恥ずかしいんですか?

ヤマシタ 演技過剰だと思っちゃうんですよね。そもそもそういうことを言いそうなキャラを描いていないし、そこで多幸感を出すのは柄じゃない気がしちゃって。

――演技過剰に「美味しい」と言わせないことが飲食シーンを描くうえで大事にしていることですかね?

ヤマシタ 大事にしているわけではないんですが(笑)。食べている最中より食べるまでを描くほうが楽しいかもしれないですね。描くこと自体は、トーンを貼らなきゃいけなかったりして面倒くさいんですけど。

――朝と槙生の生活を描くにあたって、面倒なごはんのシーンを入れないこともできるかと思うんですが、それを選択しようとは思わなかった?

ヤマシタ たぶん私がごはんのことばかり考えているので、生活の話を描こうとするとごはんを抜きにはできないんだと思います。ごはんを一緒に食べたらもう仲良しだし、ごはんの思想が合わなかったらもうやっていけないと思う性質なので、そのつもりで描いているところもあります。「ごはんを食べているシーンがあるので、この人たちは仲良しです」とか、「気まずいごはんなので、この人たちは気が合いません」という意味合いも出てくるのかもしれません。

――塔野さんとはまだごはん食べる場面が出ていないですもんね。

ヤマシタ あいつ、ごはん食べるのかな(笑)。

――食べさせてあげてください(笑)。

Q:「朝が書くようになった日記は先生が実際にやっていたことなんですか?」

ヤマシタ 十代の頃から何回か書いてみようと思ったことはあるのですが、自分の字が嫌いなのと、一度でも書き損じると「誰もお前を愛さない…」って気持ちになっちゃうんで続いたことがなくて。それに、毎日漫画描くことしかしていないので、書くこともないし。基本ズボラなので向いていないし、なので、日記を書き続けたことはないです。

――日記をアイテムとして出そうと思ったのはなぜですか?

ヤマシタ …覚えていない(笑)。そもそもなんでこのタイトルになったのかもわからない。

――日記にまつわるいいセリフやエピソード、結構ありますよ…?(笑)

ヤマシタ いろいろなことを忘れちゃうんですよ。あ、ほんとだ、いいこと言ってる。 (「本当のことを書かなくていい」と槙生が言っているシーンを見つつ)

ヤマシタ でも、なんで書こうと思ったかわからないですね。

――日記への憧れめいたものがある?

ヤマシタ やってはみたかったんですよ。学生時代にクラスメイトが手帳を可愛くつけているのを見て、素敵だなと思って真似したくなるんですが、色ペンの使い方もシールの使い方もわからなくて、なんか殺伐とした書き損じのある手帳になっていって…。

――愛せないわけですね。

ヤマシタ まったく愛せない(笑)。

Q:「『高校の時の醍醐が息ができなかった』にあたるお話を描く予定はありますか? 醍醐さんに今付き合ってる方はいるのでしょうか?」

ヤマシタ これはたぶんないかな。醍醐の話はまだ考えていないんですが、これから先、もしかしたら考えることがあるかもしれないので、絶対ではないですが。

――付き合っている人についてはいかがですか?

ヤマシタ 今はいないんじゃないかな。醍醐はワンナイトスタンドをわりとするタイプなのではと思います。性に奔放。彼氏はいないかなー。

Q:「ヤマシタ先生の漫画は、日常の会話がとても自然なところも大好きです。女子高生の若者言葉など、今時の新鮮な言葉はどのように覚えているのでしょうか?」

ヤマシタ 合っているかなとものすごく不安になりながら想像で描いています。サイン会に高校生くらいの若い方がいらしてくださると、そう見当はずれの言葉を使っているわけではないのかなと安心しますね。今の若い子がどんな言葉でしゃべっているのか知らないですし。ただ、あまり流行り言葉に則して描くと、何年か経ったときに違和感が大きくなってしまうので、そこは気をつけています。スマホなんかの小道具もそうで、つい何年か前は登場人物が手にしているのはガラケーだったわけですから、これから先どう変わるかわからないし、とりあえず曖昧なスマホを描いておくしかないんですよね(笑)。

――流行を取り入れすぎず、かといって現代舞台として違和感のないようにというのは難しそうですね。

ヤマシタ 今の若い女の子のファッションは、わりと清楚系な感じが多いように思うのですが、派手な女の子やイケてる女の子をどんな風に表せばいいのか、悩んでしまいます。コギャル全盛だった私の世代だと、ある意味コギャルがそういう女の子たちキャラクターアイコンだったんですが、今の若い女の子たちにはそういうわかりやすいものがないので、どう描くか悩ましいです。

Q:「お洋服もかわいいと思いつつ読んでいますが、イメージしているブランドとかありますか? 個人的にはKEITA MARUYAMAっぽさを感じています」

ヤマシタ イメージしているブランドは特にないんですが、コミックスの表紙を描くときは、「TOMORROWLAND…」と思いながら描いています(笑)。

――実際にTOMORROWLANDのカタログを資料にしているというわけではなくて、TOMORROWLANDという単語が持っているイメージを念頭にということですか?

ヤマシタ そうです。4巻で槙生が着ているジャケットは、昨年か一昨年のシャネルのクルーズラインがめちゃくちゃ可愛かったなと思いながら描きました。

――槙生たちが着ている服を描くときに悩むことはありますか?

ヤマシタ 服を描くのはわりと好きなので、そんなにないです。女の子を描くのは楽しいですし、違国日記のキャラクターはカラフルな服を着せたり、ポーズを取らせたりするのがやりやすいので、楽しく描いています。

Q:「1巻表紙を初めて見たとき、ジブリの『おもひでぽろぽろ』みたいだなって思ったのですが、先生も描きながら「あの頃の自分」を思い出したりしますか? 槙生と朝は同じ時間軸にいるので、設定全然違うと思いますが

ヤマシタ 『おもひでぽろぽろ』観てないんですよね…。

――朝の言動に刺激を受けてか、時折、槙生も自分の学生時代の頃を思い出したりしていますが、そんな風に学生時代のことを思い返すことはありますか?

ヤマシタ わざわざ思い出に浸るということはないですが、たまに友達と会ったときに学生時代の話になったり、なんてことはあります。たいがいくだらないことしか思い出話になっていないんですが(笑)。『違国日記』を描くときに何か思い出すということはないかな…。高校生の描写として自分が経験した思い出深いことを描くこともなくはないです。『きみはスター』の卒業式のシーンなんかは、自分が実際体験して、わりと美化された思い出として自分の中にあったものを描きました。

Q:「学生の頃にオトナの言動や矛盾に怒りやモヤモヤや疑問を感じることはありましたか?」

ヤマシタ ありましたね。私はわりと先生に楯突くほうでした(笑)。

――そういった経験や心情などを『違国日記』に限らず作品に落とし込んだりすることはありますか?

ヤマシタ どうでしょう…。大人になって思い返してみれば、子供としての私の怒り自体が理不尽だった場合もありますから、そのままってことはないかもですね。ただ、人間ってわりと言われて嫌なことは忘れないものですから、覚えてはいます。漫画家になってからは、嫌なことがあると「お前のことなんか漫画に描いてやる」って思うことも稀にあります(笑)。

Q:「高校生の槙生ちゃんは何の部活をしていましたか?」

ヤマシタ それは決めていないですが、なんかやっていそうですよね。意外なやつ…バドミントン部とか? 帰宅部ではなかったんじゃないかなと思います。

(槙生の高校時代の一場面が映る)

ヤマシタ この子はソフトボール部で、この子はテニス部というのは、作画をしているときから決めていました。これは口から出まかせでなくて、本当に(笑)。

(インタビュー・文/桜雲社・山本文子)

***

次回は、単行本第4巻の最後(第20話)に収録されている槙生と笠町くんのあのシーンの裏話や、「感情を言語化する」ということについて、さらにディープなトークをお届けいたします! 第4弾もどうぞお楽しみに!!

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