特別《向井》対談!ねむようこ×パンサー向井慧③快調な仕事を投げ打ってまでする恋愛はあるのか問題
ねむようこ先生の最新シリーズ『こっち向いてよ向井くん』①の発売を記念して、お笑い芸人・パンサー向井さんのラジオ番組を愛聴するねむさんと、マンガ『こっち向いてよ向井くん』の主人公と同じお名前&年齢の向井さんの対談が実現!
『FEEL YOUNG』2021年3月号掲載分を4回に分けて公開致します。第3回は、エンタメ最前線を走るために欠かせない「価値観のアップデート」と、お仕事が大好きな向井さんの「仕事と恋愛のバランス」についてです!
ねむようこ
1980年生、岐阜県出身、愛知県名古屋市在住。2004年『FEEL YOUNG』にてデビュー。
初連載作『午前3時の無法地帯』がヒットし、2013年に実写ドラマ化。近刊に『ボンクラボンボンハウス』、『君に会えたら何て言おう』など。
現在『こっち向いてよ向井くん』(以上、すべて祥伝社)、『神客万来!』(芳文社)を連載中。
向井慧(むかい・さとし)
1985年生、愛知県名古屋市出身。お笑いトリオ・パンサーのツッコミ担当。
『有吉の壁』(日本テレビ)をはじめ多数のテレビ番組で活躍する他、自身が愛するラジオにて頭角を現し『#むかいの喋り方』(CBCラジオ)、『パンサー向井のチャリで30分』(ニッポン放送)など、現在4本のレギュラー番組を抱える。
価値観のアップデート
ねむ:そもそもこのマンガは、向井くんが10年前の彼女に「守る」と言ったら「守るってなに?」と返されたところから始まるんですが…。
向井:向井くんは彼女の言葉の意味がわからなかったんですよね。
ねむ:「男は守るもの、女は守られるもの」という感覚も時代とともに変わってきているけど、向井くんはまだそこに気付いていなくて。とはいえ私も例外ではなく、感覚が変わっていくことへのアンテナは年齢とともにちょっと鈍感になってく。
向井:うんうん。
ねむ:向井さんはラジオで「そういうところをアップデートしていかなきゃ」と仰っていましたが、具体的にどのようにされていますか?
向井:結局、仕事にまた戻ってくるんですけど…。10年くらい前かな、僕らの仕事がライブ中心の時期の話です。ライブのお客さんはほとんど女性でした。いろんな芸人がエピソードトークをしてる中で「”女”と〜」と喋る芸人と「”女性”と〜」と喋る芸人が出てきて、”女”と言った瞬間に客席が一瞬ピリッとするんですよ。「あれ?”女”って言い方がウケにくくなってる要因のひとつだぞ」と肌感覚で感じました。そこがオチとか関係なくても、言葉を変えるだけでウケ方が変わるんだったらやっぱりウケる方を選ぶじゃないですか。
ねむ:はい。
向井:そこを紐解いていくと、ピリッとした理由を徐々に意識できるようになってきたんです。ロケで街行く人に話し掛ける時も「おいくつなんですか?」「結婚されてるんですか?」と以前は当たり前に聞いてたけど、聞いた瞬間に会話がさーっと流れなくなってきて、こういうのってだめなんだと。
ねむ:でも、それを感じられない人もいっぱいいますよね。元々のアンテナが鋭敏なんだろうなあ。
向井:だから、そこは嫌われたくないとかに通じるのかもしれないです。
——あと、やっぱりお仕事がお好きなんですね。人間として良くなろうという意識ももちろんお有りかと思いますが、「仕事をやりたい!」という意欲がすごい。
向井:それが一番強いかもしれないですね。だから、もし自分にいろんなお笑いの才能が元々めちゃくちゃ備わっていたら考えてないかもな、と思うこともあります。
ねむ:そこが多少鈍感でも気にならないくらいウケてたら…?
向井 負けずに来れてたら。自分がこの世界に入ってスターになっていたら、考えていなかったであろうことはいっぱいあります。だから逆に、勝ち続けた人のほうがアップデートするの難しいんだろうな、とは思いますね。
ねむ:でも、傍から見たら向井さんは十分勝ちですけどね!? そこで負けだと思えることが次に繋がっているんだろうな。私は「ダメだ…」となった時でも、自分をごまかして「いやでもまだ大丈夫、連載してるから勝ち」とか思っちゃう。
向井:(爆笑)
ねむ:勝ち認定してなんとかやってきたので、なぜ負けたかとか、1面のボスでやってくにはどうするかというふうには考えられないです…。
——負けを受け入れること自体が、気力も体力もいることではないですか?
向井:いりますいります。でもしょうがないというかねぇ、受け入れないわけにはいかないくらい感じちゃうんで。
ねむ:負けを感じたときに、「結婚しなきゃ」とは別に「寄り添ってくれる彼女が欲しい」みたいな気持ちにはならないですか?
向井:「誰かに認めてほしい」という承認欲求はめちゃめちゃ強いと思うんですよ。でも、お笑いが好きだから、自分が面白いと思ってる先輩に認めてもらう以上のことはないんですよね。
ねむ:あら〜…、そうなんですね。
向井:だから、それがずっとお世話になっている又吉(直樹)さんだったりするんですよね。昔から「又吉さんに褒められてるからいっか!」という納得のさせ方を自分にしてきた。どんだけ世間から認められてなくても、又吉さんだけは「おまえは大丈夫」と言ってくれてるからまだやれる。今も、ちょっとそれはありますね。
ねむ:すごくいいお話だ!
快調な仕事を投げ打ってまでする恋愛はあるのか問題
——無粋ですが、そこに恋愛は介在できないんですか?
向井:そこに恋愛…は、あんまり考えたことないかもしれないですね。
ねむ:そもそも恋愛ってなんですっけ?
向井:そう、だからそれが俺もわかんなくて(笑)。まさに、付き合うってなんだっけって。
ねむ:私は40歳で、結婚してるし恋愛なんかめちゃくちゃ遠いし現状全く必要ないけれど、若い時はなぜか必要だったわけじゃないですか。向井さんは、わからない=いらないですか?
向井:いや、いらないとは思わないです。恋愛したい気持ちはもちろんありますよ!…でも、今の自分が1面のボスだとして物語が進んでく中で、どこかが満たされてないから面白いんじゃないかと思う部分もあって。
ねむ:なるほど。
向井:今のどうしようもない孤独感とか、ぼろぼろになっても一人でなんとか戦う姿がエンタメになってるんじゃないかと。ここで誰かと付き合って結婚したら、また新しい物語にはなるんですけど、俺の物語を読んでる読者はそんなこと求めてないよなとどっかで思っちゃってる部分もあるんですよね。
ねむ:それって、若林さんを見てたご自分の気持ちがそこにあるんですか?
向井:うーん、そうかもしれないですね…。オードリーさんのラジオは昔から好きで、もちろん今なおずっと面白いし、全然変わんないんですよ。でも、若林さんのお笑いの能力が高いから、結婚されてもそのまま面白いわけで、それと俺は別だよなと思ってしまう。今の俺は一人だから言えることを楽しんでもらっていて、それを投げ打ってまでする恋愛ってあるか? と。
ねむ:それは大きな決断になっちゃいますね。
向井:もちろん、なんだっていいとは思ってるんですよ。自分の人生を生きて、その時々に起きた嬉しいこと、嫌だったことを喋り続ければいいし、それで聴いてくれる人が離れる離れないは自分がどうこうできることじゃないですから。…でも、やっぱりお笑いが好き過ぎて、結婚は今いいやってなってますね。
ねむ:焦りとかは…?
向井:(食い気味に)ありますあります。一歳でも早く子供が欲しい、という気持ちはずっとある。お母さんはもういないんですけど、父親に孫を見せたいな、とかも思います。
ねむ:お忙しいですからね…。でも、めっちゃタイプの女性が現れたら好きになりますもんね?
向井:絶対なります。でも、そもそも出会うことがないですよね。2020年は本当に特にそうでしたね。
ねむ:それは、お聞きして大丈夫ですか?
向井:ああ、全然大丈夫です。そもそも、誰かとごはんに行く気になれる日が週何日あるんだろうって。仕事が終わった後にどうしても反省の時間が必要なんですよ。仕事が終わってから1〜2時間、いつもの公園や喫茶店で一人で過ごす時間を確保したら夜10時とか11時とかですし、そこから誰かを誘うのもなあ…と思って。
ねむ:生活のスタイルが、一人で仕事をする形で回っているってことですよね。そこに女性を一人入れるの、めっちゃ難しいですね。その仕事のサイクルを崩したくないじゃないですか。
向井:その通りです。だから、現状打開策ゼロなんですよ(笑)。
ねむ:「仕事をやりたい」と「子供が欲しい」という気持ちが両方一緒にあるというのはすごくよくわかります。私もそれでずっと悩んで、子供は今2歳なんですけど、作ると決心するまでにやっぱりすごく時間がかかってしまいました。
向井:そうなんですね。だから、さっきのアップデートの話じゃないですけど、結婚しようがしまいが、子供がいようがいまいが、もう自由じゃないですか。自分の生き方をみんな自由に選べていいはずだと心から思ってるのに、自分はめっちゃ子供を欲しがってる。自分の思考と、他人に思うことが全く逆だから、まだ自分の中で整合性がとれてないんですよね。矛盾してるよなあって。
——いえ、でもそれも自由なんですよ。子供を欲しがる自由だってあるわけですから。
ねむ:でも、そんな簡単には決断できないですよね。子供って、産まれたら途中でやめられないですから…。私はやっぱり年齢的なことを考えて、そこを決めないと、仕事の軸足もぶれる状態だったんですよね。マンガの仕事は一度始めると2年とか続いていくので、子供を産むなら産むで調整するし、産まないならもっと仕事を増やすし。
向井:なるほど。男性よりももっと明確に、身体的な構造上必要に迫られたということですよね。
ねむ:そうですね。男性は多少余裕があるかもしれませんけど、余裕がある分後ろに送ってしまうということもありそうですね。
向井:難しいです。だから、マジで全く答え持ってないですよ。
——マンガの向井くんにアドバイスをいただこうかと思っておりましたが…。
向井:答えなんか持ってないです!俺も一緒!「頼むからうまくいって」と祈るのみです。
ねむ:(笑)。でもたぶん、今の向井さんは全然恋愛モードじゃないんですよね。だって、モテないわけないじゃないですか?
向井:なにぶん接触がないんで、本当にゼロなんですよ。
——番組でご一緒された方とかは…?
向井:ないですないです。バラエティなんてみんな基本楽屋にいて、本番だけスタジオでやって、終わったら着替えて帰るだけなんで。
ねむ:現地集合解散!休憩時間に“みちょぱ”って呼んでいいか問題ですよね?
向井:そうです。そんなことで踏みとどまってるようじゃもう無理ですよ。でもミキの昴生とか普通にあだ名で呼んだり、「写真撮ってやー」とか行くからすごいなと思います。俺には絶対無理。でもやっぱそういう男の方がいいんだろうな、とも思います。
ねむ:女性だって言われなきゃわかんないですもんね。逆に、女性から「向井さん写真撮ってください」と言ってくれたら嬉しいですよね?
向井:めちゃくちゃ嬉しいっす!
ねむ:ですよね(笑)。来てくれないとどっちもわからないのに、お互い「来てよ」と思ってるんですよね、男女って。
向井:まさに昴生が河西みたいな感じなんすよ。既婚者だから意味合いは違うんですけど。ガンガン行ってるのを見ながら、こっちは「あーあ、デリカシーないな…(冷ややか)」と勝手にかっこつけちゃってるんですよね
——向井くんだ…(笑)。
向井:大学でテニサーに入る人を「あーあー」と思ってるくせに、入ったほうが楽しいのわかってる感覚に近いかもしれないです。
ねむ:チャラ男になったほうが人生楽しいに決まってますもんね。
向井:そりゃ、そう思いますよ。でも、チャラ男じゃできないことやってるし、チャラ男じゃない感覚だから言えることがある。…と思ってないとやってられない(笑)。
ねむ:面白いですね。まさにラジオを聴いている気持ちになりました。
④に続きます!
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2022年9月8日発売!
『こっち向いてよ向井くん』④
恋愛を諦めようとした矢先、未練の元カノと突然の再会…!
大波乱! 35歳オトコの恋愛まちがい探し
10年振りに彼女ができた!と喜んだのも束の間、結婚を急ぐ彼女と足並みを揃えられず、お別れしてしまった向井くん(35)。恋愛も、結婚も、自分には必要ないのかもしれないーー。そんなふうに考え始めた矢先、未練の元カノ・美和子と不意の再会…!後日2人きりで会うことになり、向井くんワンチャンなるか…!?
胸に込み上げる懐かしさは、「今」に繋がっているのだろうかーー?
向井くんのハッピー(?)ターンな第4巻!!
『こっち向いてよ向井くん』④(B6判)
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