『25時、赤坂で』斉藤壮馬×佐藤拓也×原作者・夏野寛子 BLアワードW1位記念鼎談(part.3)

佐藤拓也「爪の先だけでもいいからこれまで演じてきたどのキャラクターとも違う“その人の声”を成立させたい。」
株式会社シュークリーム(マンガ編集プロダクション) 2023.04.14
誰でも

夏野寛子先生の『25時、赤坂で』が、BLアワード2023で「BESTシリーズ」「BEST BLCD」それぞれの部門で1位を受賞しました。さらに、「BEST BLCD声優」部門では『25時、赤坂で』のドラマCDで本作の受・白崎由岐を演じる斉藤壮馬さんが1位、攻・羽山麻水を演じる佐藤拓也さんが2位を受賞。これを記念し、夏野先生、斉藤さん、佐藤さんの対談が実現しました。作品についてはもちろん、俳優BLである本作にちなみ、役者としてご活躍されているお二人から“お芝居”にまつわるお話をたっぷりしていただきました。

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ものを作る楽しさと苦しさは紙一重

ーー“俳優BL”である『25時、赤坂で』にちなみ、声優としてご活躍されているお二人が感じる「お芝居をすることの楽しさ」を教えてください。

佐藤:自分ではない人間の人生を生きられるのは楽しいですね。自分ではない人間ということは、例えば麻水なら麻水の人生観や価値観の中で生きなければいけないので、同時に窮屈さや不自由さも感じます。でも、その決まった枠の中で隣にいる人と好きなように言葉を掛け合うことが、また楽しいんですよね。

斉藤:さとたくさんに近いのですが、「今、隣にいる人と喋っているんだ」と感じる瞬間がお芝居の楽しさだと思っています。新人の頃は先輩や音響監督さんに、「芝居をするなら人の芝居を聞け」と言われてきたのですが、最初の頃は自分のことに精一杯で人のお芝居を全く聞けていませんでした。それを理解して試行錯誤まではできるものの、上手くいかない日々が数年続いていたんです。だけど、ある時「あ、今すごくお互いに会話している」と思えた瞬間があって。何よりも代え難い病みつきになる快感でした。そう思えた時、僕はお芝居にハマってしまった気がします。

佐藤:だから、ここ2〜3年は特に、隣にいてくれる人、共演者のありがたさをめちゃくちゃ感じます。その前は不特定多数の人間が同じブースに集まって、マイクの前に入れ替わり立ち替わり移動しながらお芝居をすることが常識でしたけど、それが(コロナ禍で)崩れてしまったので。先に収録した声を聞きながら演じることがあるのですが、同じ空間で隣にいて熱を伴って空気を震わせた声が僕の身に届くことは叶わないんだなと感じるんですよ。

斉藤:今の収録の環境に変化したことで、自分はいただくことばかりを磨いてきてしまったのかもしれないなと痛感しています。人からもらった言葉や表現を増幅させて、自分のお芝居を構築してきましたけど、これから先はもらうばかりじゃいけないんだなって。それは苦しくもあり、苦しみの中にこそ気づきがあるなとも感じますね。もちろん今の収録形態になる前から毎回できていたわけではなく、できないこともたくさんありましたけど。

斉藤:だからこれはギフト的な感覚なんですよね。スポーツ選手の方に例えるなら、“ゾーンに入る”感覚に近いのでしょうけど。それがあるから、“自分の考えが唯一の正解”と思わなくてもいい。「今のところは自分の考えたままを試してみるけど、別の考えもあり得る」と思える、ロジカルな部分もたくさんあるけど、直感的な部分もすごくあるところがお芝居のおもしろさです。でも何度も言いますけど、できない時は本当にできない(笑)。

佐藤:こんなにままならないかなぁって思う時はすごくある。

夏野:それは今でも思うことがあるんですか?

斉藤:今の方が思うかもしれません。ある程度の経験をしてきていると、“型にハマる”という魔境に入ってしまうことがあって。中途半端な知識が邪魔をするんですよ。

佐藤:そうなんですよ。経験があることは必ずしもいいことではなく、時には邪魔をしてくる。こうやって好きな仕事をしているにも関わらず、たくさんの方に喜んでもらえることって貴重だし、幸せだし、生きる上で稀有な現象だと思います。だからこそ、自分はもっとできるのではないかと自分の知らない自分、伸びしろみたいなものを信じたくなってしまう。「みんなが喜んでくれているからこのままでいいや」だと終わってしまう気がして怖い。常に飢えているというか……自分に対して欲張りになるんですよね。

だから、よく「声優さんはいろんな声が出せる」と言われますけど、演じている僕自身はそういうことじゃないんだよなと思うわけです。表現や声の温度など、爪の先だけでもいいからこれまで演じてきたどのキャラクターとも違う“その人の声”を成立させたい。

斉藤:同じ人はいないですからね。「この役のアプローチは前に演じた誰々に似ているから、この型を使いながら少しだけ変化を加えよう」とかでは全くなくて。その人が何を見て、どういう思考回路で、この感情にたどり着いたか、それを素直に感じたまま出せることが重要なんですよね。僕が出会えたこの人(役)のことだけを信じるのみというか。自分を信じるのではなく、由岐くんという人を信じています。

夏野:お二人のお話を聞いて勝手に分かるなと思うところがあるのですが。私もマンガを描いていると「ここでこうすると盛り上がるだろう」という自分の中の型みたいなものがあって、それに頼りたくない、ほかのアプローチで描いていかないといけないのではないかと思う時があるんですよ。そういう時、『25時』であればメインの二人を含めた登場する特定の人間のことをずっとずっと考えて、変化していく過程がおもしろいし楽しいんだろうなと思いました。

私は読者の方に読んでいただくことが嬉しさのMAXで、きっと声優の方も反響で楽しい嬉しいと感じることはたくさんあると思うのですが、私ならマンガを描くこと、お二人ならお芝居することそのものが楽しいから、大変なことがあっても続けていけるのだろうなと感じます。好きだからこそ「もっと」という気持ちになるのかなと。

佐藤:おっしゃる通りだと思います。

ーー夏野先生はマンガを描いていて、どういう時に大変さを感じますか?

夏野:基本的にはすごく楽しいのですが、スケジュール面や細々した作業は面倒ですね。なんで私が絵を描かないと完成しないのか、Netflixを見ているだけでマンガが完成しないのか、と思います(笑)。

お二人のお話から人と仕事ができていいなと思うものの、私は一人で描くことが向いているし好きなんですよね。だから、特にマンガを描く以外のことは本当に苦手なんですよ。例えばメールを返すのが面倒くさいとか(笑)。

佐藤:僕もメールを返すのが苦手ですからすごく分かります(笑)。

斉藤:面倒ですよね。編集さんが隣にいるのに、赤裸々におっしゃるんですね(笑)。

夏野:いつも全部話しているので、知っていただいているんです(笑)。

斉藤:いい関係値ですね。

夏野:私、自分の対人運に自信があるんですよ(笑)。担当さんにはかなりお世話になっていて。担当さんと打ち合わせをしていて、見てくれる人がいるからこそ話が広がったり、自分の中でボヤっと考えていたものが鮮明になっていったりする。それがとてもおもしろく、楽しいので、いつもありがとうございますと思っています。それはドラマCDの収録も同じで、皆さんと一つの作品を作るのはいいなと感じますね。

三人が感じる『25時、赤坂で』の魅力とは

ーーそれでは最後に斉藤さん、佐藤さんのお二人に『25時、赤坂で』の、夏野先生からはドラマCD『25時、赤坂で』の改めての魅力をお聞かせください。

佐藤:ここまで麻水と白崎くんの人生に寄り添わせていただいて思うのが、この二人の関係性や未来に正解がないということ。もちろん死が二人を分かつまで共に生きることが一つの美しい形だとは思うんですけど、二人が生きる世界で起こる事柄を知る術は、先生が描く世界だからこそ、僕らには正解を決めることができないんですよね。それが『25時、赤坂で』のおもしろさでもあると感じています。

また、二人の世界はすごく柔らかく、暖かく、影が差した瞬間ですら美しい。そんな人生が描かれているところが、この作品の魅力だと思います。

斉藤:今すごくビックリしたのが、さとたくさんと全く同じことを思っていて。僕は『25時、赤坂で』に関わった時から「瞳がすごく印象的」と言っているのですが、そこにただ美しいだけではなく、不安定な揺らぎみたいなものを感じるんですよね。100%安心させてはくれなくて、「二人はこの先も大丈夫なんですよね……?」と思わされるからこそ、ずっと見ていたくなってしまう。

そんな揺らぎのある物語が好きですし、先生の描かれる絵に表れているなと感じます。目が印象的なので、目が離せない。それが僕の感じるこの作品の魅力です。

夏野:とても繊細にほんの少しの感情の幅をお芝居してくださって、人が生きて話して恋をしているニュアンスを大切にしていただいて作られている作品だと思います。私自身も、そう思っていただけたらいいなと思いながらマンガを描いていたので、ドラマCDもそんな風に作っていただいてありがとうございます。

皆さんの生活に寄り添える温度感の音声になっていると思っていて、個人的には癒しの効果がある気がしているので、ぜひ聞いて癒されてほしいです(笑)。

佐藤&斉藤:ふふふ。

夏野:収録のアフタートークでもこんな風にお二人が作品のことをいろいろお話してくださって、すごく嬉しいのですが毎回私からは何もお返しができていないなと……。感謝の気持ちでいっぱいです。

斉藤:僕たちは毎回いっぱい喋りたいことがあるだけなので!

佐藤:ね!

夏野:ありがたいです。品がないんですけど、いつも担当さんに「毎回すごく貴重な経験をさせてもらっているのに、お金ももらえるんだ! お金払ってでもやりたい仕事なのに、どういうシステムなんだろう」と話しています(笑)。

佐藤&斉藤:わははは! 先生、おもしろい(笑)。

(文・阿部裕華 )

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